意地と試練と焼き芋と


秋ですね。
何かそれらしいものを食べておりますか?

芋栗きのこ、秋刀魚、柿、ぱっと思いつくものはそれくらいですか。

僕はこの時期になると焼き芋をしたくなります。
寒い中、枝葉を集めて焚き火をして暖を取り、熾火を作って焼き芋をする。

いや、いいですよね。
心落ち着く一行事です。

そういえば去年もDaddy's Kitchenで焼き芋をしました。
結果は大成功。
しっとりねっとり、甘い幸せを味わうことが出来ました。

あの幸福を再び・・・と思って今年も行ってきました。

その時の様子がこちら。




タイトル通り、当日は雨でした。
絵では判りづらいかもしれませんので、音に注目してみてください。

なかなかの雨量です。
しかもこれは前日から振り続くもの。

「何でこんな時に焼き芋してんだ」って気持ちはわかりますよ。

でも、やると決めたのですし、延期するのもどうかな、と。
それに去年も雨の中でやったので経験済み。
何とかなるじゃろ。

そう思って軽い気持ちで行きました。

しかし・・・。



結論から言うと、やらかしました。

まず、火がつかない。

去年はキャンプする場所に雨があまり届いておらず、乾いている枝が沢山あったのですが、今年は前日から続く雨の影響か、大半がずぶ濡れ。
新聞紙を持って行っていたので、それと被害の小さめの枯れた杉の葉を元に何とか火を起こすまでに30分。

この間で既に身体はしっとり。
雨が木々の合間を縫って降り注いでおりました。

が、後は枝を燃やして熾火を作り、芋を放って待つだけ。
その火を利用して、冷えた身体を温めようとして作った杉の葉茶を作ることにしました。

それから待つこと20分ほど。
よい感じに炭が出来上がり、ついでにお茶の煮出しも終わりました。

そして鍋をどけようとした時、



「あっ」



ぶちまけました。


えぇ。

ばしゃっ、と。

炭の上に。

じゅわっ、と。

一瞬で赤から黒に様変わり。



・・・。

・・・・・・。

・・・・・・・・・。


いや、正直な話、ここで帰るか真面目に考えました。

もう焼き芋なんてよくないか?
家帰ってシャワー浴びてオーブンで焼けばいい。

雨に打たれながら問答すること3分ほど。


結論は続行でした。

何故それに至ったのか、正直わかりません。
ぶっちゃけ本能は帰りたいと言ってました。
理性も流石に時間の無駄と判断した気がします。

でも、何処かで「負け?」と問うやつがいたんですね。
ついでに、こんな悪条件下を試せる機会はそうそう無いかもしれないな、とも。
だから、最後までやることにしました。


とはいえ、近くにあった燃えそうな枝は全部使い尽くした状態。
何を使って火を起こすか。

幸いにも、近くに誰かが何処かから持ってきたと思われる、長さ2m以上の木材が落ちていました。
もちろんそのままでは使えません。
びしょ濡れですし、太さも5cm以上。
折っても燃えないでしょう。

ただ、鉈はあります。
それと、太い木は雨に打たれても中まで濡れにくい、ということを何処かで聞いたことがありました。
試しに鉈で表面を削ってみると・・・確かに。
乾いた断面が出現。

後はひたすら鉈を振り、着火に必要な大小の薪を作り、かまどに運び、新聞紙で着火。
何とか火が起こりました。

でも、薪は全然足りません。
雨に打たれながら、がつがつ、がつがつ。
鉈を振り続けました。

傍から見ると、ただの危険人物にしか見えなかったでしょう。
そういう意味では登山客に出会わないで済んだので、雨に感謝しかけました。
そもそも雨でなければ、ここまで苦労しなかったのですがね。

そして、2度めの火起こしを開始してしばらく。
必死すぎて時間の感覚がなかったのですが、多分30分ほどでしょうか。
炭が出来てきました。

しかし、雨脚がどんどん激しくなっています。
加えて、完全に忘れていたことが。
熾火に被せるべき落ち葉がありません。

正確に言えば、落ち葉はあります。
ただ、持ち上げたら雫が滴る程度にびしょ濡れなので、乗せたら火が保たないでしょう。
しょうが無いので、燃やしながら焼き芋を投入することにしました。

それから動画を取りながら待つこと30分ほど。
身体が限界を訴えていました。

流石に山に入ってから2,3時間ほど雨に打たれっぱなしですからね。

寒い。

震えるほどではないですが、身体が重く、体力の低下を感じました。

なので、ここで芋を取り出すことに。
正直、持って帰って食べようと思いましたが、せっかくなら暖かい内に食べたい。
お茶をぶちまけてしまいましたし、思えば朝から何も食べてませんでした。

雨の中、待ちに待った実食の時間です。

真っ黒になったアルミホイルを剥がし、次は新聞を・・・


新聞を・・・


新聞が、黒い。


この時点で嫌な予感はしましたが、躊躇っていても現実は変わりません。
燃えた新聞紙を剥がし、芋を取り出してみました。

残念ながら予感は外れず。
半ば炭化した芋が出てきました。
固くぼろぼろとした外側を剥がし、一口。

温かさとともに焦げ臭い匂い、そして僅かな酸味を感じました。
上手く出来た焼き芋のねっとりとした濃厚な甘みなんぞ何処にも感じられません。

「・・・あぁ」

流石に残った芋を使って3度目、という力は残っておりません。

ということで、ぎぶあっぷ。
即座に撤収しました。

いやはや、お茶をぶちまけた時から予測してはいましたが、数時間に及ぶ格闘の結果は失敗でした。
普通の火であれば何とかなったと思いますが、流石に雨の中の熾火は難しいですね。
雨が当たらないところにかまどを作るか、雨の当たらない空間を作るか、どちらかを考えるべきでした。

とはいえ、収穫はありました。
雨の火の火起こしの方法を経験として確かめられましたし、次はもっと上手く火を付けられるでしょう。

これも実際にやってみたからわかったことです。
ついでに、メンタルも鍛えられましたし。
次回は3度目の挑戦まで心が保つかもしれません。
身体が保つかはわかりませんが。
そもそも、雨の中で焼き芋に行くのが阿呆なのですがね。
万が一ということもあるやもしれませんから。

というわけで、雨中での焚き火動画と、とある余談でございました。

皆様、くれぐれも雨の日の焼き芋は避けましょう。
オーブンでゆっくり焼いたものは充分に幸せな味がしますから。
労力の天秤を理性で使いましょう。

ではまた次回。