深底の星空

しってる?
これはひいおばあさまにおしえてもらったおはなしなんだけど

ずっとむかし
ひいおばあさまがこどものときよりも ずっとむかしにね
そらのほしのひかりがなくなりかけたことがあるんだって
ほしみこさまのだれかが まいにちちょっとずつそらがくらくなっているのにきがついた

それがわかったとき みんなおおさわぎ

よくないことのまえぶれだー とか
せかいがおわってしまうんだー とか
まいにちおとなたちがおっかないかおでいいあってたって

それからなんにちかして
あさとひるのあかるさがあんまりかわらなくなったとき
みこおささまがいったんだ

"てんのかみさまはわたしたちのことをわすれてしまったのかもしれない"

って

かみさまがわすれるなんて いがいとまぬけだよね
ぼくらとおんなじ

でも そんなこといってるばあいじゃなくて
そのときのむらおさとみこおささまがはなしあって あることをきめたんだ

"ひぶんにしたがって
かみさまのところへつかいをださなければ"

そうして さんにんのむらびとがえらばれた
そらのうえにいるかみさまのところへ
ほしのあかりをけさないでください っておねがいするために


きみはきっと
"そらのうえなんてどうやっていくんだろう?"
っておもったよね?

ぼくもそうおもったからきいたんだ
そしたらね ひいおばあさまはいってた

"そらにつらなるとうをのぼるのじゃ"

うん
あのとうだよ
ここからずっととおくの ほそながいやつ

あれをのぼっていったらかみさまのところへいけるんだって
とおいよね

それに あそこにいくってことは
"えるみねあ"のすをとおらなきゃいけないんだから

"えるねみあ" みたことある?
ぼく このまえとうさんのかりについてったとき はじめてみたんだけど
もうすっっっごくこわかった

だって ぼくのいえよりおおきいし ぬるぬるのぐちゃぐちゃだし
しかも どくももってて
えものをとるときはそれをつかってうごけなくするんだよ

こないだしんじゃった"いばせお"のおじさんも"えるねみあ"にたべられちゃったんだって
だから みんなあっちにいっちゃだめだっていってる

そんなこといわれなくても ぜったいいきたくないよね

でも そのさんにんのひとたちはいかなきゃいけなかったんだ
ほしのひかりがなくなっちゃったら やさいもそだたないし
ほしみこさまたちが うらなうこともできないからね

それで かみさまのところへいくことがきまってから ながいたびになるからって
しっかりじゅんびをして ほしみこさまたちにおいのりしてもらって
とうへしゅっぱつした

そのあと さんにんはいっしゅうかんくらいでとうまでたどりついたんだけど
ついたときには さいしょさんにんだったのが ふたりになってた
ひとりはほかのふたりをにがそうとして"えるねみあ"にたべられちゃったんだって

ねぇ そんなかおしないでよ
かわいそうだけどしかたがない ってひいおばあさまもいってた
それと りっぱなことだ って

でね ひとりしんで ふたりになっちゃったんだけど
そのひとたちはとうについたんだ
そして とうをのぼっていって
いちばんうえにあった あかくひかるとびらをぬけると
はいいろのおおきなへやにでた

そこで かみさまにであったんだって

ふたりをみて かみさまはすごくおどろいたそうだよ

"わすれられたものたちとまたであうことになるとは"

って ほんとにわすれてたんだね
おっちょこちょいなかみさま

それからね そこでかみさまとおはなししてきたんだって
ほしのひかりをけさないでください って

そしたら かみさまはこういったんだ

"おまえたちのほしのひかりをたやさぬようにしよう
そのかわり まいとしひとり むらびとをこちらにつれてきてくれ
おまえたちのことをもっとしりたい"

かえってきたむらびとさんは みこおささまとそのことをはなしあって
ぼくらのなかからまいとしひとり えらばれたひとを"わたりびと"として
かみさまのところ たしか"あいむどる"っていってたっけ
そこにつれていってもらうことになった

さいしょはそのむらびとさんが"わたしびと"をやってたんだ

あ しってるだろうけど
"わたしびと"ってのはね えらばれたひとを"あいむどる"につれていくひとのこと
"とーぎ"のごせんぞさまになったひとだよ

え?
もうひとりのむらびとさんはどうしたのって?

そのひとはひとりめ
えっと かみさまのところでくらすひとりめになったんだ
だから かえってきたのはひとり

のこったひとがどうなったんだろうっておもってきいてみたけど
"あいむどるはさいわいのいきつくせかい"
って "とーぎ"がいってたから
きっと おいしいものとか たのしいこととかいっぱいあって
かえってくるのがいやになっちゃったんだね

そうして
かみさまとの"けいやく"はかんりょうして
ぼくらのほしぞらは またあかりをとりもどしたんだ

これでおはなしはおしまい



ねぇ ことしはだれかしってる?

"わたりびと"だよ

きのう"とーぎ"からきいたんだけどね
"にむ"がえらばれたんだって

えー だよね?
かみさまのくにでくらせるなんて
"にむ"じゃなくて おにいちゃんのぼくがえらばれるのがふつーじゃないのかな

っていったら "とーぎ"は
"かみがのぞまれたことだからしかたがない"
ってさ

まいとしひとりじゃなくて いきたいひとみんないければいいのに

でも しかたないか
むらのきまりごとだからね
かみさまをおこらせて えいゆうさんたちがやったことをだいなしにしないようにしなきゃ

だから ぼくはおにいちゃんとして "にむ"をみおくってあげようとおもう
げんきでね って


"とーぎ"は"にむ"のことがすきだから
なきそうなかおしてたけどね
"わたしびと"のいちぞくなのに なさけないやつだよ

そうだ
おもしろそうだから からかいにいこうか

ついでに"にむ"をつれてってやろう
どんなかおするかなぁ
たのしみだね







あれ
ぼくなにしてたんだっけ?








■Fragments from "Unbound"

"天体"
"契約"
"海"

「Unbound」
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