これはただの心の整理みたいなもの。
ずっと前に、こんな夢を見た。
橋のような、灰色の石畳の道を、灰色の長衣とでも呼ぶような服を着た、灰色のくすんだ長髪の人間が歩いている。 顔は見えず、性別も年齢もわからない。
いつの間にか霞の晴れたそこに浮かぶのは、灰色に輝く満月。
何を持つか考えた結果、ネックレスを買うことにした。
とはいえ、シルバーのごついものとか華々しすぎるものは苦手なので、極力シンプルだけど、多少のアクセントになるようなものにしようと思った。
石といえば誕生石。
その時ふと、以前見た夢のことを思い出した。
そうだ、灰色だ。 濃すぎず、綺麗すぎず、良い意味で無難だ。
ブラウザを開き、灰色の石を探してみた。 すると、いくつかの石が見つかった。
艶の無い黒に近いものから、透明な中に濃灰の筋の入ったもの、銀に鈍く光る光沢を持つ金属のような珍しいものまで。
ムーンストーン(月長石)の一種で、淡い灰色を放つ石。
驚き、少し吹き出してしまった。
当時、自分が何をすべきか、何をしたいのか全くわからなくなっており、よくありがちな「自分の生きる意味」みたいなものを探していた僕は、自分の見たその夢をいつか形にしてみよう、それが自分の生きる意味だ、と考えた。
始めに考えたのは、どんな形でそれを表現するのか。
映像も絵も作れないし、とりあえず文章なら適当にブログを書く延長線上でできるんじゃないか。
そう考え、小説にすることにした。
それから時間を見つけては物語の設定や世界観、ストーリーを考えた。
中学2年生の時に書くような、妄想の山と同じか、年齢的な問題でおそらくそれよりは幾ばくか丸みのあるものが蓄積されていった。
それから1年くらい経って、ようやく大まかな枠組みが整った。
"それをすることが自分の在るべき姿だと思い込んだことがただの逃避みたいなものだったんじゃないか?"
無意識のうちにそう感じていたからなんじゃないか、と。
ともあれ、最初に自分であるために思い描いた壮大な願望()みたいなものには到達できなかった。
それからは図書館にこもったり、
そんな中、自分の頭の中には意味と価値の問いがあった。
そしてある夜、ふと実感した。
それまで自殺願望とかそういうのは一度もなかったし、
電気を消して天井を見る視界が滲み、自分の異常について考える頭は痺れ、布団に横たわる自分の身体も自分のものではないかのような感覚に覆われた。
とりあえずそれ以降は意味とか価値とか考えなくていいんだーと楽になる。
ただ、心残りのような感覚がついて回った。
そして、ちょうどVtuberなる言葉をよく耳にし始めたころ。
心のどこかにうずくまり、ふとした時に浮かび上がり、静かな主張を続けていたもの。
そうして2018の6月頃、CGを学び初めた。
・3Dモデル初心者が1年間BOOTHに出品し続けてみたお話 https://kairandou.blogspot.com/2019/09/3d1booth.html
そこからは自分の好きなものを好きなペースで作ってみた。
また繰り返している。
実のところ、前にサンプルとしてその景色に近いものを作って短い動画にしたことはある。
ここまで作れたなら、あともう一度勉強して作り直せばいいだけだ、と思っては後回しにしていた。
この時ようやく、過去の自分の遺した呪いのような願望と向き合うことにした。
とはいえ、思い立っては見たもののいきなり作れるかというとそういうわけではなく。
「どんなものを作ればいいのかがわからない」
そもそもその人間がどんな姿をしていたのか。
それを見たのはもう何年も前のことで、しかも夢というふわふわした曖昧なものであるため正確に覚えておらず。
であれば、まずはある程度具体性を持った絵に起こしてみよう、と。
ただ、ここでもう1つ問題が。
というわけで、絵の練習から開始。
そこからはBlenderにて制作を開始。
そして体調不良やらなんやらで思うように制作のリズムを作れず、良い具合に戻ってきたと思ったら、今度はこれまでサボっていた手付かずの工程を勉強したり、微妙な調整を延々と繰り返したりで時間を持って行かれ、気付けば制作開始から三ヶ月ほどたち、ようやく出来上がったのがこちら。
・3Dモデル「灰色の人」 - HollowCradle - BOOTH
作ってみた現在の心境としては、正直何も感じていないといっていいくらいに何も無い。
呪いなんて仰々しい言葉を使ったり、長々と書いてはみたものの、正直あれだけ待ち望んでいたその時が来たのに、大したものなどこれっぽっちも無く。
もしかしたら、あの時見た景色はとっくに自分の中では大きな価値あるものでなくなってたのかもと思ったけれど、今でもそれをベースにした世界を作ってみたいと思っているから、そんなことはないみたい。
では、またいずれ。
■余談
ずっと前に、こんな夢を見た。
橋のような、灰色の石畳の道を、灰色の長衣とでも呼ぶような服を着た、灰色のくすんだ長髪の人間が歩いている。 顔は見えず、性別も年齢もわからない。
周囲は明るいけれど、煙のような、霧のようなもので周囲を覆われ、確かに見えるのは前後に続くまっすぐな道だけ。
そんな灰色の世界を、灰色の人間が歩いている。
僕は少し離れた中空から、その人間が歩くのを見ている。
僕は少し離れた中空から、その人間が歩くのを見ている。
しばらくして、その人間は足を止める。
そして、上を見上げる。
そして、上を見上げる。
僕も同じように、その視線の先に目を向ける。
いつの間にか霞の晴れたそこに浮かぶのは、灰色に輝く満月。
壮大な物語世界の空を占めるような、大きな月。
それをずっと、灰色の人が見つめている。
ふと、飛び起きた。
ふと、飛び起きた。
まだ明るくない時間。
汗だらけの身体に、止まらない動悸。
淡くぼけた世界だけど、ただただ綺麗だったという感覚が自分の中に強く残っていた。
そこから少しして。
僕はその夢を見る前からアクセサリを探していた。
淡くぼけた世界だけど、ただただ綺麗だったという感覚が自分の中に強く残っていた。
そこから少しして。
僕はその夢を見る前からアクセサリを探していた。
特に大きな理由はなかったと思う。
ものをあまり持ちたくないことを思い始めた時だったから、大してお気に入りでもない細々したものを捨てて、お気に入り1つだけを持っていようと思ったとか、何かに影響されて、いつも身につけるようなトレードマークのようなものが欲しかったとか、きっとそれくらい。
何を持つか考えた結果、ネックレスを買うことにした。
そのころからUネックとかドレープネックとか、首回りのゆったりした服が好きだったから。
とはいえ、シルバーのごついものとか華々しすぎるものは苦手なので、極力シンプルだけど、多少のアクセントになるようなものにしようと思った。
少し考え、昔から綺麗な石が好きだったので、トップに石の付いたものにすることに。
石といえば誕生石。
そう思って自分の誕生石を調べたところ、あまりにも自分の外見イメージからかけ離れた、淡く可愛らしい色だったので断念。
その時ふと、以前見た夢のことを思い出した。
灰色の世界で、灰色の月を見上げる、灰色の人。
そうだ、灰色だ。 濃すぎず、綺麗すぎず、良い意味で無難だ。
ブラウザを開き、灰色の石を探してみた。 すると、いくつかの石が見つかった。
艶の無い黒に近いものから、透明な中に濃灰の筋の入ったもの、銀に鈍く光る光沢を持つ金属のような珍しいものまで。
いまいち好みのものが無く、スクロールしていく。
すると、そこにこんなものが。
「グレームーンストーン」
ムーンストーン(月長石)の一種で、淡い灰色を放つ石。
驚き、少し吹き出してしまった。
できすぎだ。
昔どこかで見たそれが、あの夢を見る原因になったのか。
一瞬そんなことを思ったけれど、そんなそそる名前であれば忘れるわけがない。
新しく服を買った時にありがちな高揚も不満も何も無かった。
何の違和感も無かった。
何の違和感も無かった。
自分にとって、そうすることが当たり前だとでもいうように。
運命なんていうほどじゃないけれど、奇妙な縁のような何かを感じた。
運命なんていうほどじゃないけれど、奇妙な縁のような何かを感じた。
当時、自分が何をすべきか、何をしたいのか全くわからなくなっており、よくありがちな「自分の生きる意味」みたいなものを探していた僕は、自分の見たその夢をいつか形にしてみよう、それが自分の生きる意味だ、と考えた。
始めに考えたのは、どんな形でそれを表現するのか。
映像なのか、絵なのか、文章なのか。
映像も絵も作れないし、とりあえず文章なら適当にブログを書く延長線上でできるんじゃないか。
そう考え、小説にすることにした。
それから時間を見つけては物語の設定や世界観、ストーリーを考えた。
夢で見た景色を思い浮かべては、部屋の隅で余りに余っていたコピー用紙に書きなぐる。
中学2年生の時に書くような、妄想の山と同じか、年齢的な問題でおそらくそれよりは幾ばくか丸みのあるものが蓄積されていった。
それから1年くらい経って、ようやく大まかな枠組みが整った。
世界観、ストーリー、キャラクター、プロット・・・
当時の自分が、勢いで書き始めるためのとっかかりとする程度には材料が揃っていた。
これだけあればあとは書くだけ―――。
数年経っても、何もできあがることはなかった。
数年経っても、何もできあがることはなかった。
別に文章を書くことが好きだったわけではないとか、自分に考えるものが評価されるはずがないとか、そもそも自分にできるわけがないとか、何が理由だったのかはわからない。
それら全てがありえそうではあるけれど、何より、
"それをすることが自分の在るべき姿だと思い込んだことがただの逃避みたいなものだったんじゃないか?"
そして、
"それを完成させてしまったら、もう自分が在る理由が無くなってしまうんじゃないか?"
無意識のうちにそう感じていたからなんじゃないか、と。
時間がたった今はそんなことを思う。
ともあれ、最初に自分であるために思い描いた壮大な願望()みたいなものには到達できなかった。
それからは図書館にこもったり、
ネットで色々やってみたり、
趣味に没頭したり、
ひょんなことからアクセサリ作り初めたり、
なんやかんやそれなりに生きてみた。
そんな中、自分の頭の中には意味と価値の問いがあった。
これには意味があるのか、どんな価値があるのか。
延々と考え続けた。
そしてある夜、ふと実感した。
「この世界には絶対的な意味とか価値とかそんなものは存在しなくて、ただ在るだけなんだ」ということ。
実感ついでに何故か死にかけた。
それまで自殺願望とかそういうのは一度もなかったし、
そのときも死にたいという感情ではなかった。
何故か、自分は死ななければならない、自分を殺さなければならないという衝動みたいなものがあった。
電気を消して天井を見る視界が滲み、自分の異常について考える頭は痺れ、布団に横たわる自分の身体も自分のものではないかのような感覚に覆われた。
その頃、自制のために、ある程度主観を切り離して極力客観視できるように見る癖をつけてたから、奇妙な衝動に襲われている最中も「ナニコレスゴイ」って感じで内心笑いながら、目をつぶって落ち着かせることで、なんとか死なずに済んだ。
後日、友人にそれを話すと、ワンネス?がどうとか言っていたけどよくわからない。
とりあえずそれ以降は意味とか価値とか考えなくていいんだーと楽になる。
そこからやりたいことやりながらのらりくらりといつも何かを作りながら生きている。
それなりに楽しみながら。
ただ、心残りのような感覚がついて回った。
あの夢の衝撃を忘れられない。
その記憶を何かしらの形にして遺したい。
それだけはまだ心の隅にあった。
そして、ちょうどVtuberなる言葉をよく耳にし始めたころ。
フリーソフトを使ってVtuberとしての身体を作ったり、ゲームのような世界を作ったり、誰でも気軽に3Dモデリングができることを知る。
心のどこかにうずくまり、ふとした時に浮かび上がり、静かな主張を続けていたもの。
夢で見た灰色の景色を形にするという、過去の自分が抱いた願望。
もしかしたら、それを形にすることができるかもしれない。
そうして2018の6月頃、CGを学び初めた。
最初は練習と自分の飽き性改善を兼ねて、毎日1つBOOTHに出品するというルールを自分に課した。
日々お題をひねり出しては作り続け、気づけば1年が過ぎていた。
・3Dモデル初心者が1年間BOOTHに出品し続けてみたお話 https://kairandou.blogspot.com/2019/09/3d1booth.html
そこからは自分の好きなものを好きなペースで作ってみた。
ありがたいことに買ってくれる人も増え、TLで自分の作ったものを使って作られた作品に出くわすことも。
作ること自体に心の負荷もないし、それに没頭する時間は素直に楽しいと思う。
これならば。
このまま続けていれば、いつかあの景色を作れるかもしれない。
そして、モデリングを始めて、2年くらい経ったころ ふと気付いた。
そして、モデリングを始めて、2年くらい経ったころ ふと気付いた。
また繰り返している。
「いつか作る」未来なんて来ない。
「いつか」は自分が決めなければならない。
実のところ、前にサンプルとしてその景色に近いものを作って短い動画にしたことはある。
ただ、そこにあるべき灰色の人を作っていない。
求めるものができたつもりで誤魔化している。
ここまで作れたなら、あともう一度勉強して作り直せばいいだけだ、と思っては後回しにしていた。
その時点から1年以上も経っており、何も進んでいなかった。
この時ようやく、過去の自分の遺した呪いのような願望と向き合うことにした。
とはいえ、思い立っては見たもののいきなり作れるかというとそういうわけではなく。
「どんなものを作ればいいのかがわからない」
そもそもその人間がどんな姿をしていたのか。
どんな顔で、どんな格好だったか。
性別、年齢、服装、髪の色、雰囲気...。
それを見たのはもう何年も前のことで、しかも夢というふわふわした曖昧なものであるため正確に覚えておらず。
であれば、まずはある程度具体性を持った絵に起こしてみよう、と。
ただ、ここでもう1つ問題が。
僕は自他ともに画伯と認めるほどで、絵の技術など一切持ち合わせていない。
かろうじて生み出せるものといえば、小学生の描く落書きを不気味にしたゆるキャラと言えなくもない某。
というわけで、絵の練習から開始。
こちらもモデリングを学んでいたときと同じよう、毎日継続できる程度にやっていこうと、模写でもオリジナルでもなんでも1日1つ描くというルールを設けた。
ここで大まかなイメージが固まる。
で、2ヶ月くらい経った時、夢で見たものと近づき始める。子供の落書きレベルの画力を改善すべく、昨日から模写始めてみた。折れぬためには好きなもの描いとけってことで、とりあえずCLAYMOREのテレサを。よくわからんけど、描くのは楽しめる方だってのはわかった。 pic.twitter.com/0q0YeoSHh8— 糸凪邑/Yu Itonagi (@hollow_cradle) May 5, 2020
■練習63日目
結構好きな雰囲気に近づいた。基本無表情で、時々僅かに変化がある、みたいなのが好み。 pic.twitter.com/UgXupdRvpp— 糸凪邑/Yu Itonagi (@hollow_cradle) July 7, 2020
ここで大まかなイメージが固まる。
そこからはBlenderにて制作を開始。
これが大体7月頃。
そして体調不良やらなんやらで思うように制作のリズムを作れず、良い具合に戻ってきたと思ったら、今度はこれまでサボっていた手付かずの工程を勉強したり、微妙な調整を延々と繰り返したりで時間を持って行かれ、気付けば制作開始から三ヶ月ほどたち、ようやく出来上がったのがこちら。
・3Dモデル「灰色の人」 - HollowCradle - BOOTH
才能も持たず、大した労力もかけず、綺麗な学び方もしていない人間が初めて作るもんなんてこんなもんだろうって感じ。
でも、自分が妥協できる最低ラインはクリアできたし、何より商品画像にあるように、夢に出てきた光景を一部とはいえ形にはできた。
だから、今はこれでいい。
作ってみた現在の心境としては、正直何も感じていないといっていいくらいに何も無い。
呪いなんて仰々しい言葉を使ったり、長々と書いてはみたものの、正直あれだけ待ち望んでいたその時が来たのに、大したものなどこれっぽっちも無く。
想定ではすっきり爽快!!みたいなものを得られるんじゃないかと期待してたんだけど、そういうのは一切無かった。
ただ、何かがつっかかってるような感覚みたいなものは消えた。
もしかしたら、あの時見た景色はとっくに自分の中では大きな価値あるものでなくなってたのかもと思ったけれど、今でもそれをベースにした世界を作ってみたいと思っているから、そんなことはないみたい。
たぶん、過去の自分がした大きな決断みたいなものから逃げ続けたことそれ自体が気に食わなかっただけなのかも。
今の自分のスタンスとしては、過去の自分は別人であり、現在の自分からすると価値の無いことをやっていたりするので、そんな自分にこだわらず、改めて現在の自分の持つ観点で考え直すべきだと思っている。
思っているのだけれど、達成できないまま何年もずるずる引きずり続けたっていうのが、自分の中では無視できなかったのかも。
要するにただの意地。
きっとそれだけのお話。
でも、これでお終い。
過去の自分のどうでもいい願いは形になることで消えてしまいましたとさ。
そんなこんなで公開した夢の住人であるところの「灰色の人」ですが、もしお気に召した際はアバターやらゲームの登場人物やら、何かしらの絵作りやら、その他もろもろにご利用頂ければ大変嬉しゅうございます。
BOOTHの方も、あれを作ってる途中でフォロワー800人超えていたみたいですし、これからは何かに縛られることなく、これまで以上に気ままに作っていきますので、いつも通り気軽かつ適当にお付き合いいただければ、と。
では、またいずれ。
■余談
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